〝おみやげ〟のチョイスって意外と難しいものです。——何が? そして——どれが? 「土産」足り得る品物なのか。そもそも〝おみやげ〟の定義は何なのか? 今回はそんな〝おみやげ〟にまつわる疑問を解消したいと思います。
この記事のポイント
・おみやげは、他者へ寄贈すること
・おみやげは、情報の伝達が必要
・おみやげは、地理的な特異性(その土地らしさ)が重要
1 〝おみやげ〟の意味をおさらい
旅行先や外出先などから家などへ持ち帰るその土地の産物
2 〝おみやげ〟の定義
日本おみやげ学会によると〝おみやげ〟の定義は以下の4つにまとめられます。
① 人間の移動に伴い、物品を入手すること
② 第3者へ供与すること
③ 情報の伝達を伴うこと
④ 物品そのものに、地域的な特異性があること日本おみやげ学会 おみやげの定義より引用
表現は固いですが、とても分かりやすくまとめられています。ごく普通に旅行へ行き、おみやげを持ち帰って渡せば①~③までの条件はほぼ達成できますね。
では①~④までの条件を、もう少し細かくみていきましょう。
2‐1 人の移動を伴うこと
他者による運搬、つまり郵便などの輸送業者によって配送することは認められるが、供与者はおみやげが存在する現地へ赴く必要がある。供与者が現地へ赴かずに通信販売などで入手したものは認められない。ただし、研究のためのサンプリング手段としてはその限りにおいて認められる。
出典:日本おみやげ学会 おみやげの定義
本人が現地へ行くことが重要
本人の移動を伴わない現地物品の購入は「おみやげ」にはなりません。単なる宅配購入です。
現地へ行くからこそ、その特産物に触れることができます。訪問先の地場産品を見て回るのも旅の醍醐味ですね。
自分で持ち帰る必要はない…しかし
訪問先にて、お店で買った商品を宅配便で送ったり、楽天などの総合ネット通販経由で入手するのも、本人が現地へ訪問していれば、運搬や入手方法が違うだけで、おみやげの定義から外れません。
ただし、こうした「おみやげ」を直接相手へ送ることは贈り物のマナー違反と捉えられる可能性があります。手土産も旅の土産も手渡しが基本。相応の事情がある場合を除き、一旦自分の自宅へ配達して後日あらためてお渡しするのがいいでしょう。
2‐2 第3者への供与
供与者と被供与者が同一である場合、つまり自分自身へのおみやげが認められるかという点である。後述するが、おみやげのもつ「記念」という機能にあてはめれば、おみやげを取得した時点での本人と、その後の本人は情緒的な状態として別人であると考えることができる。
物品を入手した時点での本人の情緒状態を記録し、のちに懐古、鑑賞するという意味において、自身へのおみやげは認められなければならない。また、有償、無償の是非についても学派によって解釈の異なる点であるが、学会としてはこれを問わないこととする。
出典:日本おみやげ学会 おみやげの定義
自分自身への〝おみやげ〟は?
注釈すると「旅の最中と帰郷後の自分は、気持ちの上では別人」という解釈。少々強引な気がします(汗)
おみやげが有償・無償のどちらかと問われれば一般的に前者と思われます。ただ知人などに依頼されてお代を貰う場合もあるので、それが依頼した人にとっての「おみやげ」なのかは確かに疑問が残ります。
〝土産〟や〝記念品〟が適切
〝おみやげの意味〟でも触れましたが、本来の用語である【土産(みやげ・とさん)】はその土地の産物の意。これに敬語(厳密には美化語)の〝お〟をつけて〝おみやげ〟と呼ばれます。
なぜこのような表現なのか? それは他人へ贈ることが前提だからです。
なので自分自身への〝おみやげ〟の場合はみやげ(土産)と表現するのが、日本語的に正しいでしょう。または記念品と表現してもいいと思います。
とは言ったものの、これはあくまで厳密な話。丁寧語をつけた〝おみやげ〟が表現として定着しているので、そこまで用語を気にしなくてもいいと思います。
2‐3 情報の伝達が伴う
物品には贈与以外の地理的な意味が必要であるということである。「ある場所に行ってきた」という証拠としての情報が伴わなければならない。また、有形無形のコミュニケーションが供与者と被供与者の間に存在することも重要である。出典:日本おみやげ学会 おみやげの定義
どこまでが旅行なのか?
ここで言う「ある場所」とは何か? またその範囲、つまりどこまでが旅行なのかは人それぞれだと思います。
その上で参考となるのは、その人にとっての生活圏。
自分が主に住んでいる場所、日常の買い物でよく行き来する場所。また仕事の勤務先などは日常生活の一部と考えることができます。このような場所がその人にとっての生活圏です。この圏内の外は心理的に離れた、日常ではない場所になります。
生活圏外での物品が〝おみやげ〟になり得る
旅行や日常的ではない外出を行い、それらの場所で獲得した物品を贈り物にすれば、それを〝おみやげ〟と捉えることができると思います。
もちろん、生活圏と言っても人それぞれです。範囲が極端に狭い方、極端に広い方、複数の範囲がある方など、様々なパターンがあるでしょう。
重要なことは、その人にとって心理的・地理的に遠い場所かどうかが大事なポイントです。
2‐4 物品の地域的な特異性
その場所でしか手に入らない物品であるということである。そのまま解釈すると、全地域に流通している既製品は該当しないことになるが、入手の経緯や情緒的な状態に記念としての意味を付すことができるのであれば、スーパーで買ったボールペンや、その辺で拾った石ころであってもおみやげとして認められる。要するに物品にストーリーがあるかが重要視されるということである。出典:日本おみやげ学会 おみやげの定義
当人にとっての記念品になり得る
大手スーパーやコンビニチェーンなど、その大半が全国のどこでも入手しやすい既製品を販売しています。〝おみやげ〟の基本は「地場産品」、そして「第3者への贈与」であるためその土地らしい物がふさわしいです。この為、全国規模でどこでも入手可能な物品は〝おみやげ〟としては不適切でしょう。
上記の引用にボールペンや石ころの例えが出てきますが、他人へ贈与する〝おみやげ〟としてはなり得ません。極端な例えとはいえ、石ころを貰って嬉しい人はほぼおられないと思います。
しかしこれが自分への記念品としてならOK。それが旅先で人生が変わったり、命を救ってくれた石だとすると、それが当人にとっての付加価値になるからです。
旅先だからこその付加価値
物品のストーリー、と聞くとちょっとスケールが大きくなりますが、そこまで気にしすぎるのも良くありません。あくまで旅にちなんだ物品。それだけで十分です。
その商品を探すまでにちょっと苦労したとか、美味しそうだったとか。このように、受け取る相手にちょっとした土産話ができると思います。そんなちょっとした事がおみやげにとって大事な要素なのです。
これは自論ですが、ある意味〝おみやげ〟は、旅とその恵みを一部、他者と共有することができるコミュニケーションツールと言えなくもないですね。
3 まとめ
今回は「おみやげの定義」について考えてきましたが、いかがでしたでしょうか?
記事の最後の方に、コミュニケーションツールという言葉が出てきましたが、旅行の一部を他者と共有できる〝おみやげ〟の機能は、正しく日本的だなと感じました。
島国には協力や協調といった文化が昔からあったのでしょうか? 日本には「お裾分け」や「お福分け」といった頂き物を他者へ分けるという意味の言葉があるので、「おみやげをお裾分けする」という場面も多いと思います。
話がだいぶ逸れてしまいました。それでは今日もこの辺で。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
4 参考・出典
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